事業を続けるか、辞めるか、悩んでいませんか?これからは前向きな廃業を選択しよう!

1.「廃業」にまとわりつくネガティブなイメージはもう古い!

 昔は、近所のお店や会社がいつの間にか倒産していて、そこに住む人はお金に困って夜逃げした!なんて話を聞きましたが、「廃業」と聞くと、閉店・倒産・借金・家族離散・夜逃げなど、暗いイメージを連想しますよね。

 バブル末期に起きた有名証券会社の破綻を覚えていますか?
社長が涙ながらに「私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから」と訴えたあの記者会見・・・、そうとうネガティブなイメージですよね。ただ、あの切実な訴えが同情を集め、従業員の再就職はしやすかった、なんて意見もあるようです。結果、社長として最後の仕事をされた、という点では素晴らしかったのではないでしょうか。

たしかにバブル末期はこのような涙ながらの廃業・倒産が多かった印象がありますが、いまはバブル崩壊から約30年。
社会で働く40代以下の世代は、バブルがどういうものなのか本質を実感した経験はありません。

 当拠点の矢口コーディネーターは、「廃業とは、会社(経営者)あるいは個人事業主がその理由にかかわらず自主的に事業を辞めること。」と言っています。
じつは、あの有名証券会社の破綻は倒産ではなく自主廃業なんです。昔の廃業はネガティブでしたよね、まさに廃業の風評被害です。

 では、現在の「企業が廃業する理由」はどんなものが多いのでしょうか。

1位 もともと自分の代で畳むつもりだった
2位 事業の将来性が見通せなかった
3位 資質がある後継者候補がいなかった

そうなんです、今は先を見越して廃業する会社が増えてきているのです。最近は、倒産による夜逃げなんて聞いたことがありませんよね。

 このように廃業のイメージが変わってきているその背景には、経営者の高齢化が大きく関係しています。
高齢化と合わせて、昨年から続く新型コロナウイルスの影響による先行き不透明感で、これを良い機会と捉え思い切って廃業してしまう、といったケースも見受けられます。ポジティブですね!

 須田チーフコーディネーターも「これからは、自分で興した会社は自分でたたむ。家業として子供には継承しない。」と言っています。

バブル崩壊から30年、時代は変わり、廃業のイメージも変わりました。これからは前向きな廃業(ソフトランディング)が増えていくのではないでしょうか。経営者として将来を見通し、前向きな廃業を決断する。
そのために何より必要なのは、早め早めの相談です。

とは言え、現在でも約4割の事業主が倒産していると言う現実もあります。
それでは、ここからが本題です。
栃木県よろず支援拠点の廃業相談をご紹介します。

2.初回から「廃業」の相談をする経営者はごく一部です。~廃業相談の研修より~

 相談に来る多くの経営者は最初から廃業したいと思っていません。
特に今は、新型コロナウイルス感染拡大といった想定外の要素により将来の経営に不安を持った経営者が多く、事業継続の見通し、資金繰りの安定、経営の立て直し、後継者問題、会社を売りたい・・等の相談が目的で、「できれば廃業をさけたい」という気持ちを持って相談に来ています。

【事務局スタッフとして】
廃業の相談がしたいけど、電話がかけづらいとお思いの方は、
「今後、会社(事業)を続けるか、辞めるか、迷っているので意見がききたい」とおっしゃってください。
通常、電話を受ける私たち事務局スタッフは、
①どのような事業を行っているか
②今回はどのような相談なのか(簡単に)
などをお聞きしています。みなさん、とても詳しく説明してくれますが、経営で深くお悩みの事業者さんは電話であまり多くを話しません。
そのため、その電話のご様子でデリケートな相談かどうかを判断し、対応するコーディネーターや個室の使用などを決めています。秘密は厳守いたします。

 

 経営者(社長)は孤独であるため、相談できる人がいない・どこに相談したらいいかわからないケースを多く見かけます。
●【金融機関】は、日頃からお付き合いがあるので会社の状況をよく把握しているが、お金を貸しているという立場から廃業をすすめることはまずない。
●【商工会・商工会議所】は、地域の身近な機関だけに深く入り込めない事がある。
●【家族】は真剣に話を聞いてくれず、【お金を借りている親戚】には心配かけまいと苦しい状況は話せない。
このようにさまざまな理由から、誰にも相談できずに問題を先へ先へと延ばし、さらなる悪化につながっています。

 そのため、初回の相談は、会社の状況や社長の考えをよく聞き、気持ちを理解することに努めます。
相談者自身が回答を持ち合わせしている場合も多く、何をしたいのか、何をして欲しいのか、をよくお聞きするようにしています。

3.会社の現状を深く知り、事業継続か廃業かを判断する

①現状把握
 次は、会社の現状をよく調べます。
会社の決算書だけで経営の状況は判断できません。取引の状態、資金繰りの確認、従業員の雇用、事業主の生活や家族、連帯保証人の問題など、相談者である事業者と一緒に問題を整理確認していきます。

②経営の判断
 現状が確認ができたら、以下の三つの状況・状態から、今後の経営について判断します。

1.現状を続けた場合、いつまで耐えられるか。
2.過去の実績から今後への見通しを立てる。
3.社長個人の考え方、今後どうしたいかを聞く。

「事業を辞める」選択肢が見えてきた場合、実際に「廃業」「倒産」「破産」したらどうなるのかを詳しく説明します。休廃業なのか、解散なのか、倒産なのか、また破産したらどうなるのか、任意整理や法的整理があることも、丁寧に説明します。

③経営者による廃業の決断
 事業を継続するか、廃業するか、を決断するのは経営者(社長)であり、社長以外にはだれも出来ない仕事です。
そのため、社長の責任は非常に重いと考えています。
社長の責任については、スタッフブログ【矢口先生シリーズ 社長の責任】に詳しく書いていますのでぜひご覧ください。

【矢口先生シリーズ第1回】あなたは社長の「器」ですか。

年間約20~30社の経営者が今後の経営について相談に来ます。その内の約60%を矢口コーディネーターが担当し、過去5年間で22社が廃業となりました。

④廃業に向けて
廃業を決断したら、廃業する日を確定します。
その後は廃業に向けての準備、計画書の作成、手続き等を経て廃業となります。

4.2020年の動向調査によると、休廃業企業の件数は予想より少ない

 昨年、栃木県よろず支援拠点の相談件数は1万件を超え、訪れた相談者(事業者、創業予定者)は約2,500社(名)と、多くの事業者にご利用いただいております。
そのうち「廃業」に関する相談で25社が当拠点を訪れています。

新型コロナウイルス感染で始まった2020年。現在でもその影響は続いています。緊急事態宣言や外出自粛などで経済活動が縮小し、多く方は廃業・倒産は増えるだろう、と予想していたのではないでしょうか。
しかし、予想に反し2020年動向調査では、休廃業企業はそれほど増加しておらず、倒産企業は減少となっています。

帝国データバンクの2020年「休廃業・解散企業」の動向調査によると、休廃業・解散件数(個人事業主を含む)は56,103件で前年比5.3%減。倒産件数(法的整理)も2年ぶりに減少。東京商工リサーチのデータでも、休廃業企業は49,698件(前年比14.8%増)と2000年の調査開始以降最多となりましたが、倒産件数は7,773件で前年と比べ7.2%の減少になっています。

■帝国データバンク 「休廃業・解散」動向調査(2020年)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210105.html

■東京商工リサーチ  2020年「休廃業・解散企業」動向調査
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210118_01.html

 2020年は非常に厳しい1年間ではありましたが、持続化補助金やGotoキャンペーンなど政府・自治体による経済対策や金融機関の資金繰り支援策が奏功し、なんとか持ちこたえた会社が多かったと言えるのではないでしょうか。
ただ、動向調査によると、休廃業企業の約6割が黒字での廃業を選択しており、新型コロナの影響により先行きが見えない中、この機会に自主的に廃業を選択した企業が多かったのではないかと予想されます。

今回、このブログを書くにあたり、廃業相談のポイント研修に参加し、休廃業企業の動向調査を調べ、ネットで「廃業」を検索し、当拠点の廃業相談データを集計するなど、自分なりにいろいろと勉強してみましたが、「廃業」について何も知らないと実感しました。
新しい令和の時代、経営者の方には先を見通し力をつけ、時には専門機関に相談し前向きな廃業を選択していただきたと思っております。

栃木県よろず支援拠点 スタッフ 鳥井