【矢口先生シリーズ第5回】社長の備えるべき要件<人格・スキル・行動力>について考える

矢口先生の「社長に読んでもらいたい」シリーズ1回~4回はこちらから

第1回 あなたは社長の器ですか https://tochigi-yorozu.com/staff_blog/utsuwa/
第2回 なぜ、社長の責任は重いのか https://tochigi-yorozu.com/staff_blog/syatyonorikiryou/
第3回 自然現象から経営を学ぶ https://tochigi-yorozu.com/staff_blog/sizengensyoukaramanabu/
第4回 社長、その考え方で大丈夫ですか https://tochigi-yorozu.com/staff_blog/shatyonokangaekata/

 

1.社長の仕事と役割や責任

 まず、はじめに社長の仕事と役割や責任について考えていきたい。社長は会社全体を管理し会社経営を永遠に持続させることに責任を持っている。持続させるということは従業員を雇用し続けなければならず、そのためには顧客あるいは社会から支持され、社会全体から「なくてはならない」存在価値を持つことが必要となる。ということは、「社会貢献」、「顧客満足」、「従業員満足」、そして「安定した資金繰り」ができていることが前提となる。

 すなわち、社会に役立つことを事業とし、従業員が楽しくやりがいのある職場であって、資金に心配のない良い経営状態を作り出すことが社長の役割や責任となる。中小企業における社長の究極的な役割は、提供すべき「商品やサービスの確立」、それに従業員にやる気を持たせるための「人の管理」、そしてスムーズな資金繰りを可能とする「お金の管理」に集約することができる。

2.二代目社長や創業間もない社長に共通する錯覚

 では、社長が備えるべき要件は何か。特に中小企業においては、社長自身の人間性に代表される「人格」がまず備わっていること、次に経営を遂行するために必要な知識、技術、手法などのノウハウである「スキル」である。ただ、この二つが備わっていても、経営を動かす判断力や実行力、そして行動力がなければならない。

 中小企業の多くの経営者にみられる特徴として、人間性や人格を磨くための勉強会や知識や経営力、管理力などを学ぶためのセミナー等に熱心に参加しているが、ややすると経営手法、管理手法、計数管理などやや難関な課題に挑戦し、自己満足している姿もみられる。要は商工団体の青年部や地域の経営者の集まりに出席し、かなり高度な経営に関する勉強会に参加することで、あたかも経営者たる人格や能力が備わったような錯覚に陥っている。勉強会やセミナー等に参加することは大いに推奨したいが、これらの点のみに偏りすぎ、知識や技法はかなり詳しいのに人格や行動力が伴わない例がみられる。

 知識や技法を知るということで、立派な経営をしているという錯覚に陥っている経営者は二代目社長や創業間もない社長に共通している。これらの社長は、経営に関する知識や手法、ノウハウなどはかなり詳しく知っているが、第一に経営管理力や技術力のみで経営がスムーズに展開できると錯覚している点、第二に理論や理屈が先行し行動が伴わないという点である。

 中村天風先生は「成功の実現」の中で、「どこまでもまず人間をつくれ。それからのちが経営であり、あるいはまた事業である」と言っているが、人格の形成なくして経営がうまく運べないのは過去の歴史をみればわかる。また、「変化なくして発展はない」ことも明白である。多くの社長は行動を起こす前に躊躇してしまう。その原因は「もし、失敗したら・・・」、「面倒だ・・・」など弱気や慎重になってしまうからである。しかし、重要なのはまずは「行動する」を優先しなければならない。ある目的をもって行動すれば、その結果として何らかの変化が生まれる、変化がわかれば次の手が打てる、この繰り返しが経営であり、「P-D-C-Aサイクル」を回すという経営管理の基本はこのことを意味する。すなわち、変化しなければ発展はなく、行動なくして変化はない。

3.中小企業の社長が備えるべき人格とスキル、そして行動力

 上図をみていただきたい。自転車を動かすためには運転する人が必要で、その運転者がどこに行くかの方向を決め、ペダルを踏み動かす。そして動き出せば転ばないように前輪と後輪のバランスをとる。これではじめて安定感が生まれ、順調に目的に向かうことができる。しかし、無風で晴れの日ばかりではない。雨に日も風の日もあり、道路がデコボコの場所もあり、パンクすることもあり、重い荷物を積むときも、また時には転倒するときもあるかもしれない。これらの判断と行動はすべて運転者が行わなければならない。

 これを経営に置きかえてみると、自転車が会社、運転者は社長、前輪が社長の「人格」、後輪が社長の「スキル」、そしてペタルを踏む力が社長の「行動力」や「判断力」といえる。運転者たる社長は目的に到着するまですべての責任と権限を持つことになる。

 そして車体フレームや各部品などは強固で安心・安全、それに耐久性に優れ、デコボコの道や風、雨に耐えられる構造でなければならない。企業に例えれば、いわゆる景気の良い時も、悪い時も安定的走れる構造になっていること。そして、社長の運転技術である経営力や管理力が重要となり、さらに商品や従業員が優秀で設備投資なども盤石で、しかも借り入れもなく内部留保も十分な状態にあることが安定運転の条件となる。

3-① 社長の人格

 まず前輪である「人格」であるが、これは運転者である社長の資質の問題である。後輪と違い前輪の大きな役割は方向性を決定づけることができることである。前輪でこれから向かう方向を明確にすることで後輪も続き、車体全体がその方向に向かうことになる。会社に例えれば、何のためにどこに行こうとしているかを明確にしなければならない。すなわち、当社の目的・目標は何か、誰を相手に、何を提供しようとしているのか、そのための社長の考え方や会社の方向性が何か、さらに目的地まで幾日かかるのかの日程計画、さらには装備や人(人材)、そして金(資金)も準備しなければならない。具体的には、社長が考えるべき理念・コンセプト、方針、目標、ターゲット、市場、そして事業計画の策定などが挙げられる。

3-② 社長のスキル

 次に後輪を担う「スキル」である。後輪は駆動を担う役割を持ち、運転者(社長)が自らの力でペタル漕いで力を伝達しなければならない。いわゆる社長の力である意思決定、判断力、行動力を伝え、内外経営環境である会社の特徴、人材力、財務力、組織、そして強みや弱みを把握する。そのうえで社長の知識や経営技術、経営ノウハウなどを駆使して経営力、管理力を発揮していくのである。そして運転が始まれば、舵取りがうまく、少々の悪天候や障害物にも負けない気力や知識、技術が必要となる。

3-③ 社長の行動力

 第三が「行動力」である。理屈ではわかっているが、行動に移せない社長はかなり多い。「事業計画を立てる」、「資金繰り管理を行う」、「営業に出かける」、「今日までに仕事をやる」・・・など、実行しなければならないことが山ほどあるが、面倒とか、明日があるからなど何らかの理由をつけて後回しする傾向である。今すぐ実行する行動力こそ社長に必要な力なのである。

栃木県よろず支援拠点 コーディネーター 矢口 季男